春に続き、秋も大波乱決着となった天皇賞。GCの天皇賞回顧コーナーでお名前は失念しましたが、あるTMの方が「ヘヴンリーロマンスが勝った驚きは、ギャロップダイナが勝ったとき以上」みたいな発言をしていましたが、それはヘヴンリーロマンスに失礼というもの。牡馬相手に別定重量のG2を勝っているわけですから、私も含めて、この馬を軽視しすぎたことを謙虚に反省すべきでしょう。ちなみに、ギャロップダイナは秋天に勝ったときはまだ条件級に出走できるOP馬ですらなかったわけで、そんな馬が当時無敵を誇ったシンボリルドルフを葬り去るという世紀のアップセット。今年の秋天はそれに比べれば、ショッキングさにおいてはさほどではなかったような気がします。
しかし、このレースで最も印象的だったのはタップダンスシチーの走り。今年春の金鯱賞を勝ったときも、この馬らしからぬスローペースに落としての逃げ切りに衰えの気配を感じたのですが、今回もかつての肉を切らせて骨を断つ、というこの馬らしい逃げ脚はまるで見られず。全盛期であれば、ストーミーカフェがスローに落とした時点でさっさとかわして先頭に立っていたはず。今年の秋天の13.4-11.5-12.1-12.5-12.9-12.3-11.8-11.0-11.2-11.4という超スローを演出したのは、実はタップだったのでは、という思いも。
それにしても、今年は競馬の世界にパラダイムシフトが起きているような気がします。同じ年の宝塚記念、天皇賞・秋でいずれも牝馬が勝ったのは史上初。しかも、それが突然変異的に誕生した1頭の怪物牝馬ではなく、異なる2頭によって達成された。海外では中長距離でも男馬に伍して戦える牝馬という存在も決して珍しくはないのですが、日本もそういう意味で、ようやく世界標準になりつつあるのもしれない、などと考えたりしています。まあ、そこまで深く考えなくても、単に男馬がだらしないだけかもしれませんが。特に3歳の男馬がまるで見せ場をつくれなかったのは少々ガッカリでした。こんな体たらくでは、私のようなへそ曲がりに「ディープの三冠は単に相手が弱かっただけでしょ」みたいなツッコミを許すことになりかねません。土曜の武蔵野Sでワンツーを決めたダートの3歳馬とは対照的に、芝での3歳馬はやはりレベルに問題アリなのでは。
余談ですが、天覧競馬ということで「行幸啓」という普段あまりお目にかかれない言葉と遭遇しましたが、天皇陛下が単独でお出ましになると「行幸」、皇后陛下単独の場合は「行啓」。お二人そろってということで、天皇賞では「行幸啓」ということになるんだそうです。そんなアレやコレやを考えさせてくれたり、勉強させられたりという意味で、今年の秋天はなかなか興味深いレースだったと。そんな風に思います。
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